スリランカのウィクラマシンハ首相は5日、議会で演説し、国の「破産」を宣言しました。
ガソリンなどの燃料が極度に不足しており、
危機的状況は来年も続く見通しで、混乱の長期化が予測されます。
この記事は吹き出しだけ追えば1分でスリランカ破綻の要因がわかります。

どうして破産したの?



これからどうなるの?
まず最初に簡単にスリランカの破産の原因を言ってしまうと、
・中国の「債務の罠」のせい
・一族政権の赤字放置
・コロナで観光産業大打撃
です。
順を追って解説します。
国家の破産とは
借金が返せなくなると企業が破産に追い込まれるのと同様に、
国にも破産というものが存在します。



その国にお金や外貨がなくなり、
投資したいと思う人も減少し
経済が回らなくなる状態のことを言います。
過去には1998年にロシアが、2002年にアルゼンチンで国家の破産が起こりました。
また日本でも北海道の夕張市が2007年に財政破綻しました。
スリランカ破産への足取り
政府が赤字を放置
スリランカはもともとラジャパクサ一族が政権を握り、
財政赤字を放置してきた結果、赤字体質の国家財政、貿易赤字収支が長く続いていました。



もともと赤字体質
中国から多額の借金【一帯一路構想】


中国は巨大経済圏構想「一帯一路」のもと、アジアなど各国でインフラ投資を進めています。
その一例がスリランカのハンバントタ港。
2010年、中国の多大な融資により建設されたハンバントタ港でしたが、
高い利回りにより返済不能に陥り、
2017年7月より99年間にわたり中国国有企業にリースされることになってしまいました。



港を作ったけど返済できずに中国のもの
になってしまった・・・
インフラ整備のために中国に多額の融資をしてもらったけれど
思ったような利益は出ず、施設や土地を明け渡さざるを得なくなる中国の「債務の罠」の典型例だと言えます。


アメリカの研究機関「世界開発センター(CGD)」が2018年3月に発表した調査では、モンゴル、ラオス、キルギス共和国、タジキスタン、パキスタン、モルディブ、モンテネグロ、ジプチの8ヵ国が、一帯一路にともなった債務リスクを抱えていると指摘されています。
世界開発センター(CGD)



スリランカの他にも同様にリスクを抱えている国が存在します。
新型コロナで外国人観光客が減少
新型コロナで各国の往来は極端に減少してしまいました。
スリランカの外貨獲得の手段として主だった観光業が大打撃を受けたことで外貨準備高が減少。
AFP通信によると、外貨準備高は昨年11月末で約15億ドル(約1700億円)で、
輸入の1カ月分を賄う程度しかありませんでした。



観光がメインなのにコロナで誰も来てくれない・・・
農薬全面禁輸で紅茶などの主要輸出品の品質低下
化学肥料の輸入禁止は、
農業の完全有機化を目指すラジャパクサ大統領が、
2021年5月6日から開始したものです。
スリランカでは、地下水や土壌汚染など生態系の破壊や、
化学肥料の輸入量の増加が大きな問題になっていました。
その解決のため政府が農薬輸入禁止を打ち出しましたが、
直後から農作物の生産性低下の懸念が指摘。
実際にセイロン茶の品質が落ち見直しを求める声が相次いでいました。
紅茶の生産は主要産業であるのに、その生産量が半減するとの懸念もあり、
政府は化学肥料、農薬、除草剤などの品目に課せられていた輸入制限を撤廃し、輸入を再開すると決めました。



紅茶が輸出のメインなのに
うまく作れなくて生産量が落ちた・・・
金融資産下落
このようなスリランカの状況に加え、
ロシアのウクライナ侵攻に伴う資源高に
資金流出による輸入物価の高騰などが重なり、経済や政情不安が深刻化してしまいました。
主要株価指数は年初から4割下落し、通貨のスリランカルピーも下落、
長期国債の利回りは上昇(上がるほど価値が下落)債券価格は下落しています。


ドル建てで半分の価値に。



株価も為替も国債も、全部下落してしまった・・・
消費者物価が前年同月比54.6%上昇
スリランカの6月の消費者物価は前年同月比54.6%上昇。原油や農産物の深刻な不足で運輸のコストが前月比で128%、食品は80%それぞれ上昇した。
Bloomberg
以上の結果スリランカ国内で輸入品価格の高騰が起こり、
食品にいたっては前年同月比80パーセントと、国民の生活は破綻しています。
インフレ率は年末までにインフレ率が60%に達する見通しです。



食料品の価格が2倍になったら生活できない・・・
今スリランカで起こっていること
スリランカ政府はエネルギーの輸入代金支払いに苦慮しており、
家計と企業は3月以降停電に悩まされています。
また、生活に困窮した市民が反政府デモを行い政府側と対立。
一部では暴動に発展し、大量の逮捕者を出しています。


引用:読売新聞



日本!IMF!助けて!!!
今後どうなる?
過去の例(アルゼンチン)
暮らすことさえままならない国民はデモや暴動、犯罪などを繰り返しました。住むに堪えない治安の悪化は、イタリアやスペインに企業や人口を流出することとなり、国家を支えとなる医者などの知識人たちさえも、職を求めてアルゼンチンから移住していきました。貧困層のみが多く取り残される結果となってしまったのです。
NOBEL Era Limited
同様に経済が破綻したアルゼンチンでは経済破綻後、生活に苦しむ国民がデモや暴動を繰り返しました。
治安の悪化から人口が減少し、貧しい人だけが国内に取り残されてしまう非常事態に陥ってしまいました。
最終的にIMFからの融資を受けることになり少しずつ回復しています。
国際物流混乱
スリランカは面積が北海道の8割ほどの小さな島国ですが、
インド洋の海上輸送路に位置し南アジア随一の物流の拠点です。
スリランカの混乱は、まず国際流通網への影響が懸念されます。
日本つなぎ融資の可能性
日本は経済援助や平和構築などの支援を積極的に行い、かつては最大の援助国でした。
日本政府はIMF(国際通貨基金)とスリランカ政府の協議の行方を見守るとしていますが、
5月20日、林芳正外相がスリランカに対して、
計300万ドル(約3億8千万円)の緊急無償資金協力を実施すると発表しました。
IMFによる融資まで時間がかかることが予想され、つなぎ融資などを求められる可能性もあります。
ロシアに支援要請
深刻な経済危機に直面しているスリランカのゴタバヤ・ラジャパクサ大統領は6日、
ロイター通信
ツイッター上で、ロシアのプーチン大統領に対し燃料輸入に向けた支援を要請したと明らかにした。
ロシアは主要国による経済制裁により経済が困窮化するなかでも、
貴重な経済資源を少しでも得ることになることは懸念点の一つと考えられます。
まとめ
スリランカは以前から赤字体質が続いていた上に、
失政やコロナによって外貨を失っていき最終的に国の破綻を招きました。
このような状況で世界を戦略的におさえていっている中国や、戦争をしかけて世界中で非難を浴びているロシアに
頼らざるを得ない状況になっていっています。
はやく混乱が収まることを願います。